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BIBLIOTHECA GRAPHICA : 西洋挿絵見聞録(産経新聞 / SANKEI EXPRESS連載)その他
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西洋挿絵見聞録 28.(西洋と日本−3, 12月20日掲載)
若者に特権あり



 ヨーロッパで第一次世界大戦が始まり、多くの日本人が帰国するなかで、二人の青年がパリに留まった。パリ大学で法学を学んでいた小牧近江と画家志望の藤田嗣治(1886〜1968年)である。二人は爪に火をともすような生活のなかでそれぞれの夢を追い、小牧は日本大使館で働きながら大学を卒業し、藤田は戦時下のパリで初めての個展を開いた。
 戦争が終わって小牧が日本に帰国することになると、二人の青年は友情の証に一冊の小冊子を出版した。小牧の詩に藤田が絵(写真)を添えた『ケルク・ポエム』(1919年)である。版元のラ・ベル・エディションはフランソワ・ベルヌアールが興した豪華本の出版社。ガラモン体を模した美しい活字を組み、愛書家の人気を博した。プラケットと呼ばれる小冊子には、デュフィ、ドラン、ローランサン、マチス等が挿絵を寄せた。
 そのベルヌアールの小冊子で、日本の名もない学生あがりと駆出しの画家が挿絵本を出版したのだから驚きだ。若者の特権ともいうべき無垢でひたむきな情熱は、しばしばそれを受け止める寛大な庇護者を見つけ出す。人なつこく物怖じしない二人の若者は、おそらくその特権を最大に活用し、ベルヌアールに迎え入れられたのであろう。帰国した小牧は雑誌『種蒔く人』を創刊して反戦平和運動を展開、藤田は同年のサロン展に6点が入選しパリ画壇にデビューすることになる。
 この秋に出版された鹿島茂氏の『パリでひとりぼっち』はその小牧近江をモデルにした小説。主人公「コマキ君」が辛酸をなめた百年ほど前のパリが活写されている。
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- | 2007/01/24 3:53 PM